[犬・猫の病気の種類] 心臓病

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心臓病

心臓は丈夫な臓器で、生涯休むことなく伸縮を繰り返し、酸素を含んだ新鮮な血液を体じゅうに送り込む、とても重要な役割をもっています。心臓は右心室・左心室・右心房・左心房の四つからなり、その構造は人も犬も猫も同様です。犬や猫の心臓病には、先天性や後天性、心筋疾患によるものなどさまざまなものがあります。また、心不全とは、これらの原因で起こる心臓病によって、心臓が機能不全に陥り、役割を十分に果たせなくなって起こる症状・状態をいいます。

犬の心臓病

僧帽弁閉鎖不全症

僧帽弁閉鎖不全症は、老化や遺伝によって僧帽弁(心臓の中にあって、血液の逆流を防ぐ働きをする弁)がぴったりと閉じなくなることが原因で発症します。僧帽弁が閉じないと血液が逆流を繰り返し、心臓が肥大します。それによって気管支が圧迫されたり、肺の機能が低下したりして、肺がうっ血(血液が滞ってしまっている状態)して呼吸がうまくできなくなります。

僧帽弁閉鎖不全症にかかると、乾いた咳が出る、運動時に疲れやすく座り込む、呼吸困難などの症状が現れます。また、病気が進行すると肺水腫を引き起こすこともあります。犬種ではマルチーズ、ヨークシャー・テリア、シーズー、キャバリアなどがかかりやすく、特に老犬期に多くみられますが、早い場合には5歳くらいで症状が現れることもあります。犬の心臓病の7~8割を占めているといわれます。

人では閉じなくなった僧帽弁を修理する方法(弁形成)や人工的に新しいものと換えてやる方法(弁置換)が治療法として一般的です。しかし、犬や猫では一般的ではなく投薬によって心臓の血管を拡張させて負担を抑え、病気の進行をできるだけ遅らせる治療が中心となります。

心筋症

犬の心筋症は心筋(心臓を構成している筋肉)が正常に働かなくなることで、血液が全身に行き渡らなくなる心臓病です。原因によって特発性心筋症と二次性心筋症の2種類に分けられます。原因不明の特発性心筋症は、心筋が薄くなる「拡張型」、厚くなる「肥大型」、硬くなる「拘束型」の3種類で、犬では大型犬で拡張型の特発性心筋症が多く見られます。二次性心筋症は、糖尿病や貧血、中毒などによって引き起こされますが犬では稀な疾患です。

心筋症にかかっても、初期段階では特に症状は現れません。しかし、進行すると腹水がたまってお腹が膨れるほか、肺水腫などによって咳や呼吸困難が見られることがあります。さらに、急に歩けなくなるほか、不整脈が起きてぼんやりする、元気がなくなる、意識がなくなるなどの症状が見られ、最悪の場合には突然死することがあります。

心筋症を治療するには、利尿剤や強心剤などを投与します。また、塩分を減らした食餌を与えて心臓の負担を和らげます。進行性の病気なので、たとえ症状が見られなくなっても、治療は継続して行います。しかし、拡張型心筋症の場合、残念ながら予後はあまり良くなく、延命できても1~2年以内に死に至るケースがほとんどです。

犬のフィラリア症(犬糸状虫症)

犬のフィラリア症はフィラリア(犬糸状虫)という寄生虫の感染によって起こる病気で、治療が遅れると心臓病になって命にも関わります。フィラリアは、そうめん状の白く細長い寄生虫で、蚊を介して犬に感染します。感染は次のような順番で起こります。

  1. 蚊がフィラリアに感染している犬を吸血したときに、フィラリアの幼虫(ミクロフィラリア)が蚊の体内に侵入します。
  2. ミクロフィラリアは蚊の体内で成長し、次にその蚊が未感染の犬を吸血するときに、フィラリアが刺し口から犬の体内に侵入し、寄生します。
  3. 犬の体内に入ったミクロフィラリアは、2~3ヶ月ほどの間に脱皮を繰り返して成長し、血管のなかに侵入します。静脈をつたって心臓に到着し、感染後半年で成虫になって、右心室や肺動脈に定着するようになります。

フィラリア症は、感染初期は無症状ですが、体内のミクロフィラリアが成長して感染がひどくなると、咳や息が荒くなることが多くなり、散歩の途中で休息する回数が増え、他の心臓病と同じような症状が現れます。末期にはお腹に水がたまって膨れる、意識がなくなる、血を吐くなどの症状が現れ、死に至ることもあります。

フィラリア症は、蚊の活動が始まる春先から、活動しなくなる秋の終わり頃までの間、月1回の予防薬を定期的に与えることで予防できます。しかし、この方法は正確には感染予防ではなく、寄生したフィラリアを成長前に死滅させる早期駆除です。そのため予防薬の投与は、蚊がいなくなる時期の1ヵ月後まで投与を続ける必要があります。また、フィラリアの成虫の感染があると、予防薬の種類が異なる場合があります。

先天性心疾患

  1. 心室中隔欠損症:先天的に心室中隔(左心室と右心室の間の筋肉の壁)に穴があき、左心室と右心室がつながってしまう病気です。病態が軽い場合は特に症状は現れません。しかし重い場合は、運動するとすぐに疲れる、息が荒いなどの症状が現れ、子犬が発育不良をおこすことがあります。
  2. 心房中隔欠損症:先天的に心房中隔(左心房と右心房の間の筋肉の壁)に穴があき、左心房と右心房がつながってしまう病気です。病態が軽い場合は特に症状は現れません。しかし重い場合は、運動するとすぐに疲れる、皮膚や粘膜が青白くなる、意識がなくなるなどの症状が現れます。心房中隔欠損症の犬がフィラリアに感染すると、中隔にあいた穴を通じてフィラリアが右心房から左心房に移動して、肺や心臓の機能障害などの深刻な症状を引き起こすことがあります。
  3. 動脈管開存症:犬では最も多い先天的な心臓病です。胎児期に使用され、生まれてくる前後で閉じてしまう胸部大動脈と肺静脈を繋ぐ血管(動脈管)が、それ以降も閉じないことが原因で循環に問題を起こします。無症状の場合も多く、心雑音により発見されることもあります。進行すると、元気がない、発育不良、食欲不振、呼吸困難などを起こし突然死することもあります。

症例写真:正常な犬の心臓のレントゲン

症例写真:拡大した犬の心臓レントゲン


正常な犬の心臓のレントゲン(矢印:気管)

拡大した犬の心臓レントゲン
僧帽弁閉鎖不全症によって正常な心臓と比べ拡大し、気管も押されて持ち上がっている(矢印)


症例写真:正常な犬の心臓のエコー

症例写真:拡大した犬の心臓のエコー


正常な犬の心臓のエコー
黒矢印:左心房 赤矢印:左心室
青矢印:心室中隔 緑矢印:右心房

拡大した犬の心臓のエコー
僧帽弁閉鎖不全症によって正常な心臓に比べ、左心房が拡大している


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猫の心臓病

心筋症

猫の心筋症は、心筋(心臓を構成している筋肉)が、厚くなったり薄くなったりするなどの異常が生じて、心臓の働きが弱くなる病気です。元気や食欲の低下、呼吸困難などの症状が現れます。治療が遅れて、血栓(血の固まり)が血管内で詰まると、後ろ足に麻痺がみられたり、急死したりする可能性もあります。

猫の心筋症は、症状によって「肥大型」「拡張型」「拘束型」の3つに分けられます。このなかで特に多いのは、心臓が内側に向かって厚くなっていく「肥大型心筋症」です。心筋症の原因は不明ですが、「拡張型心筋症」の場合は、タウリンの欠乏によって発症することがわかっていて、発症数も減少しています。また、メインクーンでは肥大型心筋症の遺伝による発症が報告されています。

心筋症自体を根本的に治す方法はありません。それぞれの心筋症の症状によって、利尿剤や血管を広げる薬、血栓をできにくくする薬などを投与して、症状をやわらげます。

先天性心疾患

先天性の心臓病は、生まれつき心臓に異常のある病気で、無症状のケースから生後すぐに命を落とすようなケースまで様々です。発症する猫はそれほど多くはありませんが、特にシャムネコによくみられます。母猫のお腹にいるときに、心臓に何らかの障害が生じて正常に発育しなかったことが原因と考えられています。遺伝的な要因も考えられますが、まだはっきりとはわかっていません。

犬と同様の心室中隔欠損症、心房中隔欠損症などがみられ、お腹に水がたまって膨れたり、呼吸困難や咳、チアノ-ゼ(舌や唇が青白くなる状態)が見られたりします。いずれの場合にも、症状が重い場合は普段から運動を嫌がってじっとうずくまっていたり、発育不良を起こしたりして、成長する前に死に至ることがあります。

先天性の心臓病の根本的な治療法は、外科手術を行うことですが、猫の場合心臓が小さいため、困難です。そのため、それぞれの症状に合った薬を用いて、対症療法を行います。

症例写真:猫の心筋症のエコー


猫の心筋症のエコー
赤矢印:肥大した心筋
緑矢印:狭くなった左心室


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